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亜麻とリネンの関係とは?特徴・歴史・魅力をわかりやすく紹介

さらりとした肌触りが心地よいリネンの服や、使うほどに暮らしに馴染んでいくリネンのクロス。
天然素材ならではの風合いと飾らない美しさから、衣類や寝具、インテリアなど、さまざまな場面で親しまれています。
お買い物をしているときに、「リネン」という表記のほかに「亜麻」という言葉を目にしたことはありませんか?
実は、リネンの原料となる植物こそが「亜麻」です。亜麻という植物を知ることで、リネンがどのように作られ、なぜ古くから人々に使われてきたのかが、より分かりやすくなります。
この記事では、亜麻とリネンの関係から、リネンが持つ特徴や他の素材との違い、そして長く愛用するためのお手入れ方法まで分かりやすく解説します。
亜麻とは?

亜麻(アマ)は、アマ科アマ属の一年草です。初夏になると、細い茎の先に可憐な淡い青色の花を咲かせます。
亜麻は、人類が古くから利用してきた植物の一つとされ、その用途は繊維から食品まで多岐にわたります。
茎から採れる丈夫な繊維を原料にした糸や布が、リネンと呼ばれます。
そして、種子である「亜麻仁(アマニ)」は食品として利用されるほか、圧搾することで亜麻仁油(アマニ油)が得られます。
茎と種子をはじめ、植物のさまざまな部分を異なる用途に活用できることも、亜麻の大きな特徴です。
亜麻とは?基本的な知識とリネンや亜麻仁油との違いをわかりやすく解説
リネンとは?

リネンとは、亜麻の茎から採れる繊維を原料として作られる糸や織物のことです。
原料となる植物が「亜麻」であり、その茎から採れる繊維を紡ぎ、織り上げて作られる素材が「リネン」です。
フラックスとリネンの違い
リネンとともによく使われるのが「フラックス(flax)」という言葉です。
フラックスは英語で亜麻という植物そのものを指し、植物や原料としての亜麻を表す際に使われます。
一方、その茎から採った繊維を加工して作られる糸や布などは、一般に「リネン(linen)」と呼ばれます。
簡単にいえば、「フラックス=植物・原料」「リネン=そこから作られる繊維素材や製品」と考えると分かりやすいでしょう。
リネンが高級素材とされる理由
リネンは、天然繊維の中でも比較的高価な素材として扱われています。
その理由の一つが、亜麻からリネンができるまでに多くの工程を必要とすることです。
収穫した亜麻は、微生物の働きを利用して繊維を取り出しやすくする「レッティング」を行い、その後、茎を砕いて木質部を取り除き、繊維を選別して整えます。
さらに紡績、製織という工程を経て、ようやくリネンの生地になります。
また、良質な繊維用亜麻の産地は冷涼な気候の地域に集中しており、天候によって収穫やレッティングの状態が左右されることもあります。
こうした原料栽培から繊維加工までの長い工程が、リネンの希少性や価値につながっています。

出典:「リネン・テキスタイル」帝国繊維株式会社提供
リネンの特徴と魅力
リネンには、天然繊維ならではの機能性と独特の風合いがあります。

通気性がよく、清涼感がある
リネンは通気性がよく、熱や湿気がこもりにくいことから、さらりとした清涼感のある素材です。
特に高温多湿になる夏の衣類との相性がよく、シャツやブラウス、ワンピースなどに古くから利用されてきました。
吸湿性・速乾性に優れる
リネンは水分を吸収しやすく、さらに吸収した水分を比較的早く放出する性質があります。
そのため、汗をかく季節の衣類だけでなく、キッチンクロスやタオル、寝具など、水分を吸って乾きやすいことが求められる用途にも適しています。
丈夫で長く使える
リネンは天然繊維の中でも強度が高く、耐久性に優れた素材です。また、水に濡れると強度が増す「湿潤強度」の高さも特徴の一つです。
適切に手入れをすることで長く使うことができ、ヨーロッパでは古いリネン製品が世代を超えて受け継がれてきた文化もあります。
使うほどに柔らかな風合いへ
新しいリネンには特有のハリがありますが、使い込み、洗濯を重ねることで、次第に柔らかな風合いへと変化していきます。
新品の状態だけでなく、使いながら変化していく質感を楽しめることも、リネンならではの魅力です。
ナチュラルな風合いを楽しめる
リネンには、糸の太さのわずかな違いや節、自然なシワなど、天然繊維ならではの表情があります。
アイロンでしっかりと整えた仕上がりはもちろん、洗いざらしの自然なシワを生かして楽しめることも特徴です。
均一につくられた素材とは異なる、一枚一枚の自然な風合いが、衣類やインテリアに独特の表情を与えてくれます。
亜麻からリネンができるまで

畑で育った亜麻が、一枚のリネン生地になるまでには、いくつもの工程があります。
まず、繊維用の亜麻は茎の長さを生かすため、刈り取るのではなく根ごと引き抜く「プーリング」という方法で収穫されます。
収穫した茎は畑に寝かせ、雨や露、微生物の働きを利用して、繊維とその周囲の組織を分離しやすくする「デューレッティング」を行います。
その後、乾燥した茎を砕いて木質部を取り除き、繊維を梳いて長く整えます。こうして取り出した亜麻の繊維を糸に紡ぎ、織り上げることで、私たちが普段目にするリネン生地が完成します。
自然の力と多くの工程を経て作られることも、リネンという素材の特徴の一つです。
リネンのメリット・デメリット
リネンには、吸湿性や速乾性、耐久性といった多くのメリットがある一方、天然素材ならではの知っておきたい性質もあります。
さらりとした肌触りと乾きやすさ
リネンは吸湿性と速乾性に優れ、汗や水分を吸収しても比較的乾きやすい素材です。また、静電気が発生しにくいことも特徴の一つです。
衣類だけでなく、シーツやキッチンクロスなど、日常のさまざまな場面で利用されているのも、こうした性質によるものです。
伸縮性とシワへの配慮
一方、リネンは伸縮性が小さいため、衣類ではデザインやサイズによって動きにくさを感じることがあります。
また、洗濯によって縮みが生じる場合があり、シワがつきやすいこともリネンの特徴です。
強い脱水を避け、形を整えて干すことでシワを抑えやすくなります。
逆に、自然にできるシワをリネンならではの風合いとして楽しむこともできます。
使い、洗うことを繰り返しながら少しずつ柔らかくなっていく変化も、リネンの魅力です。
リネンと他の素材との違い
衣類や生活用品には、リネン以外にもさまざまな繊維が使われています。それぞれの特徴を比較してみましょう。
リネンとコットンの違い

リネンとコットンは、どちらも植物から作られる代表的な天然繊維です。
コットン(綿)は柔らかな肌触りが特徴で、衣類やタオル、寝具など幅広い用途に利用されています。
一方、リネンはハリのあるさらりとした風合いを持ち、吸湿性・速乾性に優れています。また、繊維の強度が高いことも特徴です。
柔らかさを生かすコットンと、清涼感や耐久性を生かすリネン。それぞれの特徴に合わせて使い分けられています。
リネンとヘンプの違い

ヘンプは、アサ科の大麻から採れる植物繊維です。
リネンと同じく主に茎から繊維を採りますが、一般にヘンプはハリやコシのある風合いが特徴です。
リネンは比較的しなやかな風合いを持つことから、衣類や寝具、テーブルクロスなど、肌に触れる用途にも広く利用されています。
なお、日本の家庭用品品質表示法では、亜麻(リネン)と苧麻(ラミー)は「麻」と表示できますが、ヘンプは「植物繊維(ヘンプ)」などと表示されます。
リネンとラミーの違い

ラミーは、イラクサ科の苧麻(ちょま)から採れる繊維です。
日本をはじめ東アジアで古くから利用されてきた植物繊維で、ハリやコシが強く、独特の光沢と清涼感があります。
リネンはラミーに比べてしなやかな風合いを持つため、同じ「麻」と表示される素材でも、触ったときの質感には違いがあります。
リネンと化学繊維の違い
ポリエステルやナイロンなどの化学繊維は、シワになりにくく、扱いやすい製品を作りやすいことが特徴です。
一方、リネンは植物由来の天然繊維で、吸湿性や速乾性に優れ、天然素材ならではの風合いがあります。
どちらが優れているというものではなく、求める機能や用途によって適した素材は異なります。
現代にリネンが選ばれる理由
長い歴史を持つリネンは、現代ではその風合いや機能性だけでなく、天然素材としての特徴からも改めて注目されています。
サステナブルな天然素材として
リネンの原料である亜麻は植物であり、その繊維は天然由来です。合成繊維とは異なり、亜麻繊維そのものには生分解性があります。
また、リネンは丈夫で長く使えるため、一つの製品を手入れしながら長く使うという考え方とも相性のよい素材です。
水資源への負荷が比較的小さい
亜麻は自然の降雨を利用した露地栽培が基本で、北海道の亜麻栽培でも通常は灌漑を行わずに育てています。
一方、コットンは栽培地域によって多くの灌漑用水を必要とすることがあります。そのため、リネンは水資源への負荷という観点からも注目されている天然繊維です。
植物のさまざまな部分を活用できる
亜麻は茎から繊維を採るだけでなく、種子は食品や亜麻仁油として利用されます。
また、繊維を取り出した後に残る木質部なども、敷材や建築材料をはじめとするさまざまな用途に活用されています。
植物の各部分をそれぞれの用途に生かせることも、亜麻という植物の特徴です。
長く使える天然素材
リネンは丈夫で、使い込むほどに柔らかな風合いへと変化していきます。
新品の美しさだけではなく、何年も使い続けることで生まれる質感の変化そのものを楽しめることも、リネンが長く愛されてきた理由の一つです。
リネン製品の選び方

リネンと一口にいっても、生地の厚さや織り方、糸の太さ、仕上げ加工などによって、その風合いや使い心地は大きく異なります。
長く愛用するためには、品質の良し悪しだけでなく、用途に合ったリネンを選ぶことが大切です。
生地を見るポイント
リネンを選ぶときは、厚さや柔らかさだけでなく、織り目や生地全体の風合いも確認してみましょう。
リネンの生地には、ところどころに糸が太くなったり、小さな節のように見えたりする部分があります。これは「ネップ」と呼ばれ、天然の亜麻繊維を糸にする過程で生じる、リネンならではの表情の一つです。
ネップの出方は、糸の種類や紡績方法、生地の仕上げなどによって異なり、多い・少ないだけで品質の良し悪しが決まるものではありません。均一ではない自然な風合いも、リネンの魅力の一つです。
また、新品ではハリのある生地でも、洗濯や使用を重ねることで次第に柔らかな風合いへと変化します。購入時の手触りだけでなく、どのような用途で、どのように使っていきたいかを考えて選ぶこともポイントです。
用途にあわせて選ぶ
衣類には、比較的薄手で軽く、しなやかなリネンが使われることが多く、シャツやブラウス、ワンピースなどでは、リネン特有のさらりとした肌触りや自然なシルエットを楽しめます。
キッチンクロスやテーブルクロス、寝具などには、それぞれの用途に合わせた厚さや織り方の生地が使われています。
単純に「厚いほど高品質」「薄いほど上質」というものではなく、用途に適した生地を選ぶことが大切です。
原料の産地と、糸・生地の生産地
リネン製品を見るときに知っておきたいのが、亜麻の産地と、糸や生地の生産地は必ずしも同じではないということです。
良質な繊維用亜麻の主要産地として世界的に知られているのが、フランス北部、ベルギー、オランダなどの西ヨーロッパです。
そこで栽培された亜麻は、収穫後にレッティングや製線などの工程を経て繊維となり、その多くが中国をはじめとする海外の紡績工場へ渡ってリネン糸へと加工されています。
中国には、亜麻の紡績から製織、染色、仕上げまでを担う大きなリネン産業が形成されています。さらに、その糸が日本へ輸入され、国内で製織や染色、仕上げ加工が行われることもあります。
つまり、一枚のリネン製品でも、「ヨーロッパで亜麻を栽培・製線 → 中国などで紡績 → 日本で製織・染色・仕上げ」というように、複数の国を経て作られている場合があります。
そのため、「フレンチリネン」「国産リネン」といった表示を見るときは、亜麻の栽培地を指しているのか、紡績地なのか、製織・加工地なのかを確認すると、その製品がどのように作られたものなのかをより深く知ることができます。
日本にも長い織物産業の歴史があり、海外で栽培・紡績された亜麻原料やリネン糸を使いながら、国内の産地で製織、染色、仕上げを行ったリネン生地も数多く作られています。
リネンの歴史

出典:『帝国製麻株式会社五十年史』/資料提供:帝国繊維株式会社
リネンは、人類が古くから利用してきた繊維の一つです。
古代エジプトでは、リネンは衣服だけでなく、神官の衣装やミイラを包む布などにも使われ、宗教儀礼や埋葬文化とも深く結びついていました。
その後、ヨーロッパ各地へと広がり、衣類や下着、シーツ、テーブルクロスなど、人々の暮らしを支える重要な素材として利用されてきました。
現在でもホテルなどで使われるシーツやテーブルクロス類を「リネン」と総称することがあります。それほどリネンと生活用品との関わりには長い歴史があります。
リネンの歴史をより詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
北海道におけるリネンの歴史
日本にも、かつて亜麻を大規模に栽培し、繊維へと加工していた時代がありました。その中心となったのが北海道です。
明治初期、札幌周辺から始まった亜麻栽培は、北海道の開拓とともに石狩から空知、上川へ、さらに網走や十勝など道東へと広がっていきました。
北海道の亜麻産業の特徴の一つが、栽培から製品化までを地域ごとに分担する産業構造でした。
こうして各地の製線工場で取り出された亜麻繊維は札幌へ集められ、紡績によって糸となり、さらに織布されて麻布へと加工されていました。
明治から大正、昭和へと北海道各地に広がった亜麻産業も、戦後になると大きな転換期を迎えます。
化学繊維の普及や繊維産業を取り巻く環境の変化などによって国内の亜麻産業は次第に衰退し、1963年(昭和38年)には帝国繊維の札幌工場が閉鎖され、1967年(昭和42年)には北海道での亜麻栽培がほぼ姿を消します。
その後も原料を加工する工場は操業を続けましたが、1970年(昭和45年)、最後まで残っていた十勝地方の音更亜麻工場が閉鎖されました。
こうして、明治初期からおよそ100年にわたって北海道の農業と繊維産業を支えてきた亜麻は、1960年代を境に北海道の農村風景から姿を消していきました。
リネンという一枚の布の背景には、亜麻という植物だけでなく、それを育てた農家、各地で繊維を取り出した製線工場、そして糸や布へと加工した札幌の工場まで、北海道各地を結んだ大きな産業の歴史があったのです。
まとめ
リネンは、亜麻の茎から採れる繊維を原料とする、長い歴史を持つ天然素材です。
さらりとした肌触りや吸湿性・速乾性、丈夫さだけでなく、使い続けることで少しずつ柔らかな風合いへと変化していくことも大きな魅力です。
一枚のリネンができるまでには、亜麻の栽培から収穫、レッティング、製線、紡績、製織、仕上げまで、多くの工程があります。そして現代では、それらの工程が一つの国だけで完結するとは限らず、ヨーロッパで育てられた亜麻が中国などで糸になり、日本で生地や製品へと仕上げられることもあります。
日本でもかつて北海道各地で亜麻が栽培され、農村の製線工場と札幌の紡績・織布工場が結びつくことで、一つの大きな亜麻産業が形成されていました。
原料となる植物や産地、作られるまでの工程、そしてその背景にある歴史を知ることで、身近なリネン製品を見る目も少し変わってくるのではないでしょうか。

亜麻公社は、かつて北海道の開拓期を支え、時代の流れとともに一度は姿を消した亜麻を、もう一度この地に根づかせたいという想いから生まれました。
現在は北海道・当別町で、契約農家とともに亜麻を栽培し、その種子から亜麻仁油や焙煎亜麻の実など、北海道の亜麻を暮らしのなかで楽しんでいただける製品づくりを続けています。
かつてはリネンの原料として北海道の産業を支え、現代では食をはじめとする新たな形で暮らしにつながっている亜麻。その魅力を、これからの北海道にも受け継いでいきたいと考えています。
北海道で育った亜麻を使った製品に興味のある方は、ぜひ亜麻公社の公式通販もご覧ください。